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インプラント代替治療・「ノンクラスプデンチャー」の実際

■筆者紹介■パーフェクトインプラント大阪|医療法人 孝陽会 戸谷歯科クリニック|院長 戸谷 孝洋(とたに たかひろ)

NPO法人歯科学研究所 インプラント認定医、メデント・エグゼクティブインストラクターetc…
平成4年 長崎大学歯学部を卒業後、数々の歯科医院にて勤務後、平成12年に戸谷歯科クリニックを開設。後に歯科インプラント治療に力を入れ、当インプラントセンターを開設。

患者様とのカウンセリングの中でしばしば話題として上がってきますのが、金属を使わない審美義歯「ノンクラスプ・デンチャー」です。インプラントが技術的に困難な場合・又は予算的に困難な場合に代替治療として提案を受ける場合が多いようです。今回は、このノンクラスプ義歯について解説してみたいと思います。

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ノンクラスプ義歯=メタルフリー義歯 :ノンクラスプ義歯は、「エステティックデンチャー」「クラスプレスデンチャー」などとも呼ばれ、金属の維持装置を使う代わりにポリカーボネート樹脂を支える歯の周りに配置する義歯のことです。一般的には、義歯は支える歯を金属でバネ(維持装置)で動かないように留める構造が一般的です。食事や会話をする時に外れないように維持する役割を金属バネが行うわけです。それに対して、ノンクラスプ義歯は金属をほとんど使用しません。一般的には7万円から15万円位の価格帯で治療が行われます。メリットはメタルフリーのため、自然な歯並び、審美性を実現できることです。ただ、様々な問題点・デメリットもあります。

1 ノンクラスプ義歯は、装着感があまりよくありません。義歯の動揺もやや大きくなります。ノンクラスプ義歯は、金属バネ(維持装置)の代わりをプラスチックが行うわけですが、金属ほどの維持力が無く、食事を行う時にどうしてもがたつきが出てしまい、食片が義歯の内面に入り込みやすくなります。色々なものがお口に入ると、プカプカと動きやすく、使用感は少し劣ります。

2 ノンクラスプ義歯は、割れた時の修理が基本的にできません。支える歯を巻くように位置している、いわゆるウィングの部分が割れやすいのが難点です。それだけではなく、ノンクラスプ義歯は割れてしまった場合、修理が原則としてできず、型取りから作り直しとなります。ノンクラスプ義歯の材料が軟らかくたわむため、普通の義歯修理材料が接着しないからです。

3 ノンクラスプ義歯は、一般的な義歯と比較して痛みが出やすい傾向があります。咬んだ時に義歯の本体が軟らかすぎるため、歯ぐきに食い込んで痛みが出やすいのです。一般的な義歯は、痛みのある部分の内面を削り取れば痛みは消えますが、ノンクラスプ義歯は軟らかいのが災いして削っても、たわみにより痛みのある場所に食い込んできます。また、痛みのある場所にクッション材をひこうとしても、接着しないためすぐに脱離してしまいます。

このような解決の難しい問題点があり、ノンクラスプ義歯はインプラントの代替治療にはとてもなり得ない、というのが私どもの見解です。ただ、前歯のインプラントを行う際に、インプラント手術後から実際にセラミック冠が入るまでの期間に一時的なダミーとして入れていただくようにすることがあります。

ご参考になりましたでしょうか。それでもどうしても作ってほしい、とのリクエストがございましたら最善を尽くしてお作りしますが、耐久性があまりないため、一般的な保証期間は設けておりません。当センターのお奨めは、チタンという軽くて生体親和性のある金属を使い、薄く作った金属床義歯です。チタン床義歯は厚みが薄く、食感が向上する、お口の中で非常に安定している、金属バネも見えにくいように加工することができる、などのメリットに加え、フレーム全体が非常に丈夫な金属のため、長持ちするのが長所と言えます。

皆様がインプラントと義歯についてカウンセリングをお受けになられる場合は、このあたりをご念頭においていただき、ご相談されるのがよいかと思います。何かご質問がございましたら、いつでもメールにてご相談いただければ幸いです。

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